「しろ くろ 抹茶 上がり 珈琲 ゆず さくら」「山かいて山かいて池ひとつ~」と聞けば名古屋人なら誰もがメロディを思い出す、青柳ういろうやカエルまんじゅうなど名古屋を代表する菓子を作り続ける青柳総本家さんです。
140年以上の歴史を誇る老舗菓子舗の青柳総本家さんがここ数年新しい試みに次々とチャレンジ。「カエルのミルク風呂」や「ケロトッツォ」はSNSでも大注目となっています。
令和の時代に老舗菓子補がなぜ新しい取り組みを行うのか?。そこには老舗だからこその伝統とチャレンジ精神がありました。将来を見据えた取り組みの秘密について取締役の後藤稔貴様、営業企画室広報担当主任の木下美幸様にお話を伺いました。
―― 本日はよろしくお願いいたします。最初に青柳総本家の歴史について教えて下さい。
後藤取締役(以下後藤) 創業は1879年(明治12年)、今年で142年目になります。創業時は蒸し羊羹の製造から始まり、その後二代目がういろう作りをスタートさせます。その後1931年(昭和6年)に当時の国鉄名古屋駅にてういろうの立ち売りをはじめるなど、様々な取り組みを行っております。
青柳総本家がういろうに対してやってきたのは「ういろうの日持ち」を良くすること。4代目が「美味しさを閉じ込めて、日持ちがするように」との思いで、オートメーション化やフィルム包装にいち早く取り組みました。日持ちがするようになることで、お客様が遠くまで持ち運びできるようになり、お客様自身にお土産としてういろうを持って帰ってもらえると。
戦前から国鉄名古屋駅で立ち売りをしていたことに加え、この「日持ちする」ということが評価されたことで、東海道新幹線の開通当初から青柳ういろうの車内販売が始まることになります。名古屋では唯一青柳ういろうだけが車内販売を認められたということもあり「名古屋と言えばういろう」のイメージが広まりました。その意味では、当社はういろうの発祥ではありませんが、ういろうを名古屋名物にしたのは当社であると言えるのかなと思います。
他にも4代目の時代には洋菓子作りや喫茶店、本格的なフレンチレストランの立ち上げなど様々なことに取り組みました。現在は主にういろうと焼き菓子の製造販売を中心に事業を展開しています。売上構成ではういろうがおよそ6割、カエルまんじゅうが約3割、残りがきしめんパイと小倉サンドという割合ですね。その中でも「カエルまんじゅう」は年々売上がアップしています。
―― 年表を見ると「カエルまんじゅう」は比較的最近、平成になってから誕生した商品なんですね。CMのイメージが強く昔からあると思っていましたが、驚きでした。
後藤 「カエルまんじゅう」は現社長が専務を勤めていた時代に社員の声がきっかけで開発は始まった商品なんです。「青柳はカエルのロゴマークなんだから、カエルの商品が欲しいよね」と。工場の社員たちが中心になって作ってきた商品なんですが、正直最初は全然売れなかったそうです。
―― えっ!? そうなんですか!?
後藤 最初は鳴かず飛ばずで「売れない商品をやっていても仕方が無いのでは」という声も上がったそうです。しかし現社長、当時の専務が「これは社員が考えたお菓子だから、何とかして売りたい」と販売を続けたそうです。買ってもらったお客様からも、喜ばれている声は届いていたこともあって何とか続けたいと。そういった苦しい時代も乗り越えながら徐々に進化していったお菓子です。
今の若い人だと「青柳のういろうは知らないけど、カエルまんじゅうなら知ってる」という人もいるようです。
―― なんと! それもまた驚きです。さて、青柳総本家さんといえば「お土産物」のイメージが強いのですが、2017年にKITTE名古屋へ出店したあたりから新しい取り組みが増えていったように感じます。そうした取り組みを増やしていった理由や経緯についてお聞かせ下さい。
後藤 当時担当していた者から聞いた話では「名古屋の人がういろうを食べることが少なくなってきている」という想いがあったそうです。それをなんとかしようと、もう一度名古屋の人にういろうを食べてもらおうと開発したのが「ひとくち生ういろう」。最初守山の直営店で販売していたのですが、新しく出店するKIITE名古屋でも提供し、より多くの名古屋の人にもう一度ういろうを食べてもらおうと考えました。
また、KITTE名古屋での新しい取り組みとして、当社のお店では初めて「イートインスペース」を設けました。よりカジュアルにういろうや弊社の菓子を体験してもらおうというのが狙いです。正直、今はういろうを「買う」ところまで行ってもらうのが難しい、そこまで離れてしまっているのではと。それならば、ういろうをその場で体験してもらう場所が必要だと。そうすることで、もう一度名古屋の人にういろうへ振り向いてもらいたいと願っております。
―― 確かに自分もKITTE名古屋店が出来た頃にイートインでういろうを頂いて「ああ、やっぱりういろうっていいな」と改めて感じることが出来たのを覚えています。さて、KITTE名古屋店でヒットした商品が「カエルのミルク風呂」。見た目もかわいらしく写真映えもする画期的な商品だと思いますが、これはどのような経緯で開発されたのでしょうか?
木下主任(以下木下) 「カエルを使ったスイーツを作りたいね!」というところが出発点でした。当社でカエルを使った商品と言えばカエルまんじゅうですので、これを使ったスイーツを作りたいなと。そこから「カエルのミルク風呂」が生まれたのですが、最初は正直「こんなの売れるのー!?」と社内がざわめいていました。しかし、蓋を開けてみるとどんどんとSNSで拡散していって……。
後藤 ちょうどインスタグラムがブームになって、『映え』が言われはじめた頃だったんですよね。
木下 そうですね。インスタグラムですごく拡散いただきました。
―― 時代にピタっとハマった感じですね! 今年は「カエルのひのき風呂」も発売されて、私もすぐに食べに行きました。ちなみに「ひのき風呂」はどなたが考えられたのでしょうか?
後藤 私です。実は以前にデザートに使えないかなと桧の枡を作ってみたことがあったんですよね。ただ、それがお披露目出来ていませんでした。そのころはまだ自分たちで枠をはめ込んでしまって、こんなの使って大丈夫なのかと考えてしまっていたんです。すごく堅苦しくしていたなと。
では、なぜこれをやろうかと思ったかというと、それこそ「SNS」なんですよね。当社のSNSでカエルまんじゅうを使っていろんなことを投稿をするとすごく良い反応が頂けていたんです。もちろんKITTE名古屋さんの5周年記念イベントなので何かやりたいなということもありましたが、SNSでの手応えもあって「よし、やろう」となりました。
―― すっごく可愛いですので話題になりますよね。撮影用のボードがちゃんと置かれていたのもすごいなと感じていました。ちなみにボードの発案者は……?
後藤 あれは木下の発案ですね。
木下 前からボードを置きたかったんです!
―― そういえば「カエルのミルク風呂」、不器用な私だと上手に食べられないことがあるのですが、何かオススメの上手な食べ方はあるのでしょうか?
後藤 「カエル」からいくとこぼれやすいので、先にミルク風呂(シェイク)を少し食べてから頂くのが上手に食べるコツです。そうするとこぼれにくくなります。
木下 それと、あまり長く写真を撮っているとカエルが沈んでのぼせてしまうので、撮影が終わったら早めに召し上がっていただければと思います。
―― 確かに今までは「カエル」からいってました(笑)
お二人へのインタビューまだまだ続きます。いよいよ今年ブレイクした「ケロトッツォ」の開発秘話についてのお話。インタビュー続きは後編にてご覧下さい。
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