ナゴヤに縁のある様々なジャンルの書籍を著者へのインタビューを通じてご紹介する「ナゴヤビトブックス」。第15回は、水生大海(みずき ひろみ)さんの『最後のページをめくるまで』(双葉社)をご紹介します。
ーー水生大海さんのご経歴を教えてください。
三重県出身で名古屋で会社員をしていました。
2008年に、第一回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の優秀作に選ばれ、2009年に『少女たちの羅針盤』(原書房)でデビューしました。
ちなみに福山市(広島県)は岡崎市の親善都市なんです。デビュー後に知りあった岡崎市の図書館の人から教えてもらいました。
そんな福山市と愛知県岡崎市が親善都市だとは知りませんでした。この賞も、何かご縁があるように思えてきますね♪
――本の執筆を手がけられるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
子供のころから空想癖があって、物語を読んだり見たりする延長として、自分も作りはじめました。漫画も描いていましたが物語作りの基礎を学ぶために小説を書き、そちらで評価をいただくことになりました。
最後のページをめくるまでわからない……
“どんでん返し”がキーワードの作品集
――『最後のページをめくるまで』はどのような内容でしょうか?
“どんでん返し”をキーワードにしたミステリーの短編集です。
最後のページをめくるまでなにがあるかわかりませんよ、という意味を籠めて、このタイトルをつけました。
単行本の発行は2019年で、今回、文庫化ということでお求めやすくなりました。
5本の話が入っております。順番に……
「使い勝手のいい女」
勤め先が倒産し、ホームセンターでアルバイトをしている女性が主人公。彼女は店長から都合よく扱われています。鬱屈をかかえる彼女のもとに昔の恋人が訊ねてきたところから、とんでもない事態になり――
「骨になったら」
主人公は医師。妻を殺した、と物語の冒頭で語ります。通夜の席、妻の姉夫婦とその子供たちとともにさまざまな参列者を迎えます。じりじりしながら葬儀の終わりを待つ男でしたが――
「わずかばかりの犠牲」
一浪のうえ、バイトに時間をとられて留年までした主人公は大学生の男子。両親を亡くして学費のあてもなく、特殊詐欺に手を出してしまい――
「監督不行き届き」
結婚して17年、高校生の息子を持つ主人公は、会社でも責任のある立場。そんな彼女のもとに、「自分はあなたの夫の婚約者だ」と名乗る若い女があらわれて――
「復讐は神に任せよ」
夫を病で亡くし、幼い息子もひき逃げに遭った主人公。ひき逃げ犯は捕まったもののどうやら裏があるようで、彼女は復讐のために関係者を追いつめていき――
まるで世にも奇妙な世界に入り込んだような。1話1話は短いのですが、登場人物の人生を想像して体験しているような引き込まれる描写で、不思議な感覚になりました。ジェットコースターに乗っているような気持ちで読ませていただきました。
―― この本を出版したきっかけは何だったのでしょうか?
双葉文庫から「どんでん返し」をテーマにした短編を集めたアンソロジーが複数冊出ています。そのなかの新作を集めた文庫の企画に参加し、「使い勝手のいい女」を書きました。
この作品を担当編集者が気に入ってくれて、ほかにも「どんでん返し」の短編をと依頼され、本になりました。
――『最後のページをめくるまで』の裏話をお聞かせください
先にも触れましたが、今回の本は単行本の文庫化です。単行本と文庫では判型、本の大きさが違うので、1ページの”文字の行数×字数”も違ってきます。
単行本のときに「最後のページをめく」ったあとにどう展開するか、最後に物語をどう落とすか、などとこだわっていたのですが、文庫本となってどうページがずれるのか……。
本の形になるまえに、”ゲラ”という版面の試し刷りをして、間違いがないかをチェックします。間違いのチェックだけではなく、そのページのズレも考えて文章を直すなどする必要があり、頭を悩ますことになりました。また、そのゲラ刷りが宅配便で届けられたとき、どうか大幅な変更をしなくて済みますように、といつも以上にドキドキしていました。
単行本のほうをお持ちの方がいらしたら、試しに比べてみてください。
ミステリーの世界へ招待。
別世界、別の人生を味わってもらえる作品を
―― これから書いていきたい本はどのようなものでしょうか
ミステリー系のエンターテインメントです。
今回紹介いただいた『最後のページをめくるまで』はダークでビターな物語ですが、「社労士のヒナコ」シリーズのように比較的前向きな話も書いています。いろいろな人が織りなす物語で、読む人を楽しませたい、しばしの別世界、別の人生を味わってほしい、そう考えています。
――水生さん、ありがとうございました!
水生さんの書かれるミステリーは、気づくと別世界にグッと引き込まれているものばかりで、いつも楽しく読ませていただいています。「ランチ探偵」シリーズも実は大好きな作品で、事件解決だけでなく美味しいお料理の描写にやられています(笑)
ドキドキハラハラして読み終わった後には、別の人の人生を体験したような気持ちになる。これからも、水生さんの作品を楽しみにしております!
水生大海さんの公式情報はこちら
Twitter:https://twitter.com/mizukihiromi
Facebook:https://www.facebook.com/mizukihiromi
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