海の見える森のようちえん かぜのこ代表 越智 久美さん

子どもが「やりたい!」と思った、
その気持ちを後押しできるようにしたいなって。

 

【プロフィール】
愛知県西尾幡豆にある園舎を持たない幼稚園『海の見える森のようちえん かぜのこ』代表。
大阪出身。大学時代よりコミュニティカフェ運営を経験する中、『人の居場所づくり』に従事。勤務中に、プレーパーク、森のようちえんの活動の存在を知る。
コミュニティカフェ退職後、豊橋の『風の自然学校』と出逢い、スタッフとして子どもたちや親子参加のフリーキャンプの企画・運営を経験。自分の子どものための場づくりを意識する。
2017年、愛知県西尾市幡豆地区に移住。
2020年4月、自分と仲間の子どもたちのために『海の見える森のようちえん かぜのこ』をスタート。

愛知こどもの国 ふくちゃん広場にて

 『森のようちえん』は、1950年代デンマークで発祥。園舎を持たず、自然の中で子どもたちの自主性を大切に育てようとするもので、今、世界中で広がりを見せている活動です。

 越智久美さんは、2020年4月、移住先の西尾市幡豆地区で『海の見える森のようちえん かぜのこ』を立ち上げました。

取材日当日。里山や田畑、海辺など、いくつかある活動場所のうちのひとつ、『愛知こどもの国』を訪ねたところ、小学生のお兄ちゃん、お姉ちゃんたちが元気よく走り回る姿が。

この日は特別にお母さん方のサポートをいただき、夏休みの兄弟も参加したそう。いつもよりにぎやかな『かぜのこ』です。

やりたい!と思ったときがやりどき。その時、道具を渡せるように

『かぜのこ』の1日は朝9時、朝の会から始まります。

子どもたちに今日、やりたいことを聞いて、話し合いながらその日の活動を決めていくそうです。

「火をつけられるようになろうとか、どんぐりの種類がわかるようになろうとか。

そういうの、やろうと思えばできるけど…、

全員が、同じことを、均等にできるように、っていうことは、目指してなくて。

やりたいと思った時がやりどきだから、火をつけたいっていう気持ちが湧きおこっている時に、道具を渡せるように、という心持ちでね。

やりたいと思った子とね、やりたくない、こわい、だけど興味はある、見ていたい、っていう、それぞれの子がいて、それでいいな、と思っていて。

これができるようになろう、と大人が設定して、子どもをそこに当てはめて行くんじゃなく、やりたいと思った、その気持ちを後押しできるように、したいなって思っています」

人の居場所づくり』を学んだ大学・コミュニティカフェ勤務時代

東京の大学で、『居場所づくり』を学んだという越智さん。

東京の大学に進学。在学時から地域の人の交流の場となるコミュニティカフェの運営に携わる縁があり、卒業後もそのコミュニティカフェに勤め、
人が心から『自分はここにいていいんだ』と感じられる場所づくりに取り組んでいました。

社会人になってすぐに、コミュニティカフェの上司であり恩師に勧められて
“非構成的エンカウンターグループ”を体験、

そこで心から『人間って素晴らしい!』と感じたそうです。

「非構成的エンカウンターグループは、カール・ロジャースが提唱した、『人間的な出会い』のグループ体験なんです。戦争の加害者と被害者が一緒になって話すこともできるといいます。

何か話したいことがある人は話せばいいし、聞いているだけでもいい。円座になって、時間だけが決められている、ただそれだけの場に、5泊くらい行って、

参加者同士のやりとりを目の当たりにしたり、自分の心が動くのを丁寧に感じたりする中で、“人間っていい!”って思って(笑)。

ホント人間って、阿呆で、悲しくて、いやなところもあるけど、でもこうやって、場が設定されて、安心して話せる環境だと、こんなにも丁寧に相手と向き合って、それぞれにドラマがあって…。

気持ちを出し合うなかで、共感し合うだけでなくて、もめたりぶつかったりということもよく起こるんです。

それでも、そういう気持ちとか想いを見つめて、丁寧にその場に出していくことで、人が本当の意味で他者と出会っていく姿とか、

単純な円満解決ではないけれど、お互いに認め合うに至るとか、ああ、人間って悪くないな、って思わせてくれる瞬間を見守ったり、自分ごととして体験したり。

『私はここにいても大丈夫』っていう安心感のもとで、自分の、そして他者の、ありのままを認めていくことができるということが素晴らしいというか…。

これが、一番根底にあり、今の、『かぜのこ』での子どもたちとの関わり合い方にも繋がっていると思います」

人が安心していられる“場”、それを強く意識した体験だったそうです。

ほとんどの時間を過ごす場所が、
行きたい場所だったら、どんなに幸せだろう

 

徳島県に『トエック』っていうフリースクールがあって。そこを研修や見学で訪れると、子どもたちが田んぼと畑に囲まれた気持ちのいい環境で、気持ちに寄り添ってくれるスタッフたちに見守られて、とてものびやかで穏やかで…。

こういう子ども時代を、送りたかった、送らせてあげたい、って思うような…。

自分に子どもがいたら、こういう子ども時代を送らせてあげたい、っていうのがひとつと、

起きているうちの、ほとんどの時間を過ごす場所が、行きたい場所であったらどんなに幸せだろうって思って、

自分の娘が、『行きたい』って思える場所にしたいな、という思い。

結局、突き詰めると、娘のために(『かぜのこ』を)やってるんですね。

それが、やっぱり友達の大事な子にとっても、行きたい場所になったらいいなって。最初はそれでいいかな?って。

この子のために作ったら、万人受けはしなくても、『それが好き』、という方が集まってきてくれたらそれでいいな、って思っています」

その子の中から出てくるものを、大切にしたい

「今日午前中に◯◯君がふてくされてたんですけど、そういう時でも、こっちが用意した結論に導いていきたくなくて、

何かあったときは、他の人にも協力してもらって、その人と二人で話せる時間を取って。『どうですか…?』くらいに聞いて、待っていると、ぽつぽつ話してくれる。

こういうことがあって、と最初は説明から入る。で、嫌だった、とか、気持が出てきて。

気持ちを話して、それを否定もされず、ちゃんと聞いてもらって、『そうかそれがいやだったのか』と、聞いてもらったら、なぜか、だいたいはそこから、自分なりに消化していくんですよね。

聞いてもらったらすっきりした。いやこの気持ちを相手にも言いたい、とか。あれ?自分が悪かったのかもしれないぞ、とか。

だから、私が何か余計なことはしないように。

できるのは、そばにいて、言いたかったら、話したいことがあったら、話してもらって。そうだね、って。共感してあげることだけ…。究極はね。

基本はそれだなって。

そういう『人間ってすごい』っていう、コミュニティカフェ時代に、学ばせてもらったことが、子供たちもそれでいいんだ、って根っこの部分で信じています。

私が教え込んだりするんではなく、その子の中から出てくるものを、大事にしていれば…。

バラを咲かせようと思ってバラを育てるんじゃなく、何が咲くわからないけど、枯れないように、枯れない程度に、

時々ちょっと水をやったり、ちょっと支えてあげたりして、どうなっていくのか楽しみにしてるっていう」

海や山、木々、花、そして子どもたちの爆発的なパワー。生き生きと自分を表現できる場所、とてつもない安心感。

そんな越智さんの作った「場」を見ていて、私自身、心癒される時間となりました。

またどんぐりが落ちる頃、ぜひ遊びに行きたいなあと思わせてくれる、素敵なようちえんと、越智さんです。

■海の見える森のようちえん かぜのこ HP
■海の見える森のようちえん かぜのこ Facebook
■海の見える森のようちえん かぜのこ Instagram
※2021年度の年少さん・年中さんを若干名ずつ募集中です。

mamiko

mamiko

名古屋在住のライターです。地元タウン誌からマスコミ広報誌、旅行誌、教育関係誌まで、幅広く携わってきました。「ナゴヤビト」では地元ナゴヤ(東海圏)出身、またはナゴヤでユニークな活動を行っている人々をメインに、グルメ、グッズ、スポットなどを紹介。ナゴヤの隠れた魅力を深堀します。

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