ナゴヤに縁のある様々なジャンルの書籍を著者へのインタビューを通じてご紹介する「ナゴヤビトブックス」。第26回は、緩和ケアに携わる身でありながら、希少がんを患った医師・大橋洋平さん著書の『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社、2019)をご紹介します。
大橋洋平さんご経歴
1963年 三重県生まれ
1975~1982年 名古屋市内の中学・高校で学ぶ
1988年 医師となる(内科医)
2003年 ホスピス・緩和ケアの道にすすむ
2004年~ JA愛知厚生連海南病院・緩和ケア病棟に勤務(愛知県弥富市)
2018年6月 稀少がん「消化管間質腫瘍(ジスト)」が胃に発見され手術
2019年4月 肝臓転移出現
現在、がん治療を続けながら職場復帰し(海南病院非正規雇用)、自身の経験をSNS・書籍等で発信中。2022年11月には新刊『緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡』(双葉社)を刊行
――本の執筆を手がけられるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
ホスピス・緩和ケアの領域では頻繁に聞く言葉で、己も患者ではなく医者という立場の時にはしばしば使っていました。しかしいざがん患者になってみると、私は「よく」など生きられないんです。なぜならば発病前に比べて心身ともに確実に弱っているから。
でも、よかろうが悪かろうが、生きていたい。そして、しぶとく生きていきたい。
あ~こんな奴もおるんやと知ってもらえることで、たとえ一人でも誰かに生きる力を与えることができたならば、いまの自分でも役に立てることがまだあると、私自身が生きる力にもなり得ます。この理由から、本に限らず何らかの手段を通じて執筆したくなりました。
大橋先生は実際にご自身が医師でもあり患者となり、『「よく」など生きられないんです』という思いを持たれたのは、患者さん自身のリアルな言葉ですね……。
私も考えさせられました。
緩和ケア医が、がんになって。患者の真実を、ユーモアを交えて書いた手記
――著書『緩和ケア医が、がんになって』はどのような内容でしょうか?
この転移を防ぐ唯一無二の目的で手術や抗がん剤を行っていましたが、手術の後遺症および抗がん剤の副作用に耐え忍びながら、しんどいがん治療を精一杯頑張ったことは意味なかった。そういう思いになりましたね。
この苦しみを綴りました。
『苦しいのならば、いいひとにならなくていい』
私はこの言葉がグッとささりました。しんどいとき、苦しいときにはいい人にはなれない!
「こんなにもしてもらってるのだから、迷惑をかけちゃいけない。わがままは言っちゃいけない」というようなことを患者さんは仰ることが多いような気がして。そんなときに、この先生のお言葉をかけて差し上げれたら、どんなにか良かっただろうと思います。
「あきらめる、そして頑張る」はとくに印象的でした。
12のこと、のひとつ「今やりやたいことは、今やる」
ついついやらなければいけないことをやってしまいがちですが、これは私も教訓とします!
――この本を出版したきっかけは何だったのでしょうか?
この取材記事を目にした双葉社の編集者さん(いま担当してくれてます)が、出版のきっかけを私に与えてくれました。大感謝です。
――著書『緩和ケア医が、がんになって』の裏話をお聞かせください
しかしその後、事態は一変。翌4月前半にそれまで無かった転移が、肝臓に見つかったからです。あれほど起こらぬよう頑張ったにもかかわらず……。
でも今にして思えば、出版の話をわたくし断らなかったんですよ、1年後は無理だからと。断らなかったから相談の結果、前倒しになったんです。
まさか出版など夢にも思ってないから、発病後、記録や写真の類はまるで無し。あるのは入院中に口頭で聞き取った私の言葉を、その場で専属秘書がパソコンにちょこっと残してたくらい。
ここから半月ぐらい、書き綴りました。いや、キーボードを打ち続けましたね、一心不乱で。
それから間もなく思いもよらぬ早さで嬉しい一報がやって来ました。「良く書けてますよ大橋さん、これならば今年中に出せそうです」と。何で?とビックリしました。わが筆力が秀逸やから(笑)
しかしと、今回は珍しく食い下がりました。己にとっては死活問題やから(笑)何せ自らのメモを後で己が読み返せないことしばしば。現代の医療現場では当たり前の電子カルテでない紙カルテの時代、中味は置いといて先ずは読める字で書け!と先輩医師から熱き指導を叩きこまれたわたくしです。
中を開けると出てきたのは、2本のマジックペンと白紙が数十枚、それに小手紙。これを使って練習に励んでください、と直筆メッセージまでも。お蔭さまで「緩和ケア医が、がんになって」の11文字だけは読める字が書けるようになりました。ありがたい限りです。
しかしその後、手書きタイトルのリクエストは全くありませぬ。この業界は忖度なしの能力主義ですね……。
編集さんは送ってくださったペンと用紙で先生が練習されて出来あがったのが、この著書の表紙なのですね。かなりの裏話です!(笑)
がんになった緩和ケア医として、マイナーなほうの考え方・見方・モノの捉え方を書いていきたい
―― これから書いていきたい本はどのようなものでしょうか
こんな自分に今できること何か。あぁこんな奴もおるんやと知ってもらえること、すなわちどちらかと言えばマイナーな考え方・見方・モノの捉え方を書いていきたい。
例えば、後悔のない人生を送る方法よりも、後悔する人生でええやん。後悔は付き物、なぜならば後悔するのが人間と言う生き物やから、なんて。
がん患者ではないですが、私もとっても喝を入れていただきました。「今やりたいことは今やる」人生の今の時間、命を大切にしてめいっぱい生きようと思います。
ありがとうございます!
――大橋先生、ありがとうございました!緩和ケア医としてがん患者として書かれたこの手記は、リアルでとても勉強になりました。そして先生のユーモアを交えた文章にフフフと笑わせていただきました。先生のこの手記がたくさんの患者さんやご家族にも届きますように、祈念しております♪
大橋洋平さんの公式情報はこちら
大橋洋平さんFacebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100053407024085
大橋洋平さんメールアドレスはこちら
大橋洋平さん公式Twitterはこちら
大橋洋平さん公式Instagramはこちら
大橋洋平さんYouTubeチャンネル「足し算命・大橋洋平の間」はこちら
「足し算命・大橋洋平の間」3月12日(日)18:15~LIVE配信予定!!
「ナゴヤビトブックス」では「ナゴヤが舞台となっている作品」「ナゴヤをテーマとした書籍」「ナゴヤ出身の著者の書籍」など、ナゴヤに縁のあるあらゆるジャンルの書籍を著者へのインタビューを通じてご紹介いたします。
書籍を版行された著者様がいらっしゃれば、こちらのフォームからぜひお気軽にご連絡ください! (小説、マンガ、ビジネス書、実用書、各種ムック、その他ジャンルは問いません)
その他ナゴヤビトへのお問い合わせはこちらからお願いいたします。
この記事へのコメントはありません。