―――辻本さんのお仕事内容を教えてください
手作りコスメ専門の教室『NAANO(なーの)』を運営し、その代表をしています。『NAANO』では、自分のために「世界に一つのオリジナルコスメ」が楽しく手作りできます。手作りコスメの正しい作り方や化粧品原料について学ぶことができ、手作りコスメの良さを感じて頂くため肌診断(カウンセリング)も取り入れています。可愛いコスメ容器販売も行っております。
それとともに、『一般社団法人 日本手作りコスメ協会』の代表として、認定講師の育成や、手作りコスメ資格講座なども行っています。愛知県・東栄町というところの町おこしのため、地域おこし隊のメンバーの方に手作りコスメの授業も活動のひとつにあります。
手作りコスメの世界を知ったきっかけは、子ども時代に訪れた皮膚科の先生との出会いでした
―――手作りコスメを知った経緯はなんでしょうか?
手作りのコスメに関わることになった最初のきっかけは、ある皮膚科の先生との出会いでした。
私は、小学3年生の時からニキビに悩み、中学1年の時に治療のため訪れた皮膚科で手作りコスメに出会いました。以来、23年間手作りコスメでスキンケアやメイクをしています。
その皮膚科は、にきび外来というよりは、アトピー性皮膚炎をメインにされていて、薬で治すだけでなく、体質改善をしながらお肌を治していきましょうと推奨していました。週末に、体質改善のワークショップやスキンケアの勉強会が開かれたり、食事指導や入浴の方法を教えてくれたり、勉強会の中のひとつに手作りコスメがありました。
先生は結構高齢のおばあちゃん先生でした。私は甘いものがすごく好きだったので「そんなチョコレートを食べて!」と怒られたり、「好き嫌いせずに食べなかんよ~!」とか、厳しくも色々教えて頂きました(笑)
当時はコスメに興味がわくお年頃なのもありましたが、市販品を使うと皮膚が赤くなってしまい、買っては肌に合わない・・・という繰り返しだったんですね。そこでその先生に相談したら、「そこまでひどいんだったら、たぶん作った方がいいよ」と言われて、化粧水や化粧品を作るワークショップに参加し始めました。
体質改善も合わせて行っていましたが、ちょっとケアしていくうちに、高校に入学するくらいまでにはだいぶ落ち着いて綺麗になっていきました。私の場合は、そもそもスキンケアのスタートが手作りでした。
ここで手作りコスメに出会い、簡単に混ぜてできるものだったので、ずっと手作りでやってきました。高校生上がったくらいから、時代的にだんだんインターネットが普及してきたので、いろんな材料が買えるっていうのを知って仕入れては、自分で作って試したり、実験感覚で遊んでいた時期もありました。
ママ友との関わりの中から、自然な流れでコスメ教室をスタートすることに
―――手作りコスメ専門店として、独立に至った経緯はなんでしょうか?
結婚して子供を生んでからも、コスメは手作りなのが当たり前でした。
ママ友との会話の中で、子どもの肌トラブルの話が出てくる時期があり「どうしてる?」って聞かれたことがあり、「手作りしたものでうちはやっている」ってぽろっと言ったら、すごいびっくりされたんです。
簡単にできるし安いよって言ったら、みんな安いし手軽っていうのに「えっ、どういうこと?」って反応がすごく良かったんです。
最初は自宅のリビングに友達を呼んで、お昼ごはんを食べ、子どもを遊ばせがら、コスメを作るという気軽な感じでスタートしていきました。楽しく息抜きになるからで、お友達を連れてきていい?と、どんどん輪が広がっていく感じがあったのと、材料費なども掛かってくるのもあったので、教室としてやってみようかなと考えたのが娘が2歳半の頃くらいでした。
その時に主人がぽろっと、自分は会社員してるから、パートとかに出て働くよりは、そういう手作りコスメを教える自営業をやれば?って言ってたんです。人に教えるのが楽しそうにしてるから、それを仕事にしたらいいんじゃないって。主人の言葉にも背中を押されましたね。
そこから、名古屋市がやっている女性起業家ビギナーズサロンという起業塾に参加しました。託児がついていたのでそこで娘を預けながら学び、起業の準備をし、自宅で開業したのがスタートですね。すごく自然な流れでした。
国内では奥三河・愛知県東栄町でのみ採れるファンデーションの材料「セリサイト」との出会い
―――コスメなどの材料は、どこから仕入れてらっしゃるんですか?
化粧品原料なので、化粧品を製造しているメーカーさんから仕入れたり、あとはハーブとかオイルであれば、オーガニック認定をとっているメーカーさんのものを仕入れていたりしています。
ファンデーションの原料の「セリサイト(絹雲母)」という鉱物があります。これが国産で唯一愛知県にあるというのを、たまたま調べていったら知りました。私自身、セリサイトはずっと昔から化粧品原料として当たり前のように使っていたんですけど、友人に紹介してもらったあるイベントに参加したら、そこでセリサイト使ってる、知ってるって聞いて、驚きました。国産のセリサイトは、奥三河の東栄町で今も唯一採掘されています。
長い間、東栄町のものとは知らないで材料を使っていたとお話したら、実際現場に見に行かせて頂けました。セリサイトの採掘鉱山を探検するツアーもされていて、『naori (なおり)』という場所ではファンデーションの手作り体験などもできるんです。『naori』の創設者の大岡千紘さんという女性とも、そこで繋がりました。
一般社団法人の立ち上げのきっかけは、地域の町おこしのお手伝いから始まりました
東栄町の採掘現場の見学にいった1年後くらいに、「東栄町の町おこしで、新たに来る地域おこし隊のメンバーに手作りコスメのいろはを教えてもらえませんか?」というお話を頂いたんです。町おこし隊のメンバーの方に授業をする形で、スタッフの方相手に認定講座を作っていったのが『一般社団法人 日本手作りコスメ協会』の立ち上げのきっかけです。
認定も、個人でするよりはちゃんと協会としてやっていけたら良いなと思ったのと、個人的に教えていた方たちからもディプロマのようにもっと自分でこういう講座をやっていきたいという相談を頂いていたので、いいきっかけなのかなと。法人化してディプロマを発行するという形でスタートしました。
東栄町の町おこし隊は2年~3年の任期のようなので、今も新しい方が入ってきたらその都度サポートさせていただいています。
美の原産地・愛知県東栄町。自然豊かで懐かしい原風景が広がる町のビューティーツーリズム
―――東栄町で「ビューティーツーリズム」というツアーがあると聞きました
東栄町では、ビューティーツーリズムを押し出していて、セリサイトという美の原産地で、自然と美を調和させたイベントなど1週間のプログラムを企画されています。プログラムの中では、月を感じながらヨガをしたり、コスメティックのルーツ巡り体験をしたり、焼き物もできます。
東栄町HPはこちら
東栄町はすごく水がきれいな町なので、鮎が採れたりもします。同じ愛知県なのですが、行ってみるとすごく懐かしい原風景みたいな素敵なところで・・・すごく自然豊かで、すごく清められる感じがして、雰囲気がすごくよくて、空気も全然違うので、本当にいい所です。温泉もあるので合わせて楽しむこともできます。ぜひ機会があれば行ってみてほしいです。
自然豊かな町で採れているセリサイトなので、質もとても良いんだなと思います。
インドや中国産もあるんですけど、海外産はちょっと鼠色がかっていて、オイルと相性がわるいんです。海外のものは肌に乗せたりするとくすみやすい性質なんですけど、国産のものは純粋で色も白くて、くすみにくいので、海外の名だたる化粧品メーカーや一流ブランドのファンデーションは、日本製の愛知県東栄町のものを採用されているようです。すごいですよね。
手作りコスメを正しく安全に作り、使ってもらえるための、窓口になりたい
―――お仕事をする上で大切にしていること、心がけていることは?
薬事法の関係で、手作りコスメ自体は、基本的に作ったものは販売はできません。自分で作って自分で楽しく使うという自己責任の世界なんです。
教え始めてから実感したことがあって、「やってみたいけどどこに聞いたらいいかわ分からない」「材料屋さんに聞いても、どう組み合わせていいか分からない」など、はじめての人にはハードルが高い世界なのかなと感じました。
私自身は、手作りコスメの入り口は皮膚科の先生で、こういう組み合わせはお肌によくないよとか、こういう消毒方法でするとよいというのを、しっかり教えてもらえたのがラッキーだったなと思います。
『正しい知識をもって、安全に使える手作りコスメを長く使っていただきたい』という思いでやっていますし、分からないことを気軽に聞いていただける窓口になりたいなと思います。
インターネットのレシピは結構間違っていることがあり、肌トラブルを起こしてしまいそうなものもあったり、季節により調合を少し変える必要があったりもします。同じレシピではいかないこともあるので、独学や自己流でいくと行き詰まることもあると思います。
教室に来ていただいたときに、別のワークショップでやったら使い心地が悪かったというお声もありました。そういうのを見過ごしていくと、手作りコスメってやっぱり手作りなんだねというレベルで終わってしまう、イメージも悪くなってしまうなと思います。
協会を立ち上げたのも、ここで学んでいただければ、知識はちゃんと備えた上で講師になれたり、分からない部分をクリアにしていきますよという、受け皿になりたいと思い活動をしています。
1個の指針じゃないですけど、自分用に作るにしても、人に教えるにしても、最低限これは身につけておかないとというものがあるといいですよね。手作りコスメ業界の全体的なレベルを上げていくためにも、育成の方に力を入れています。
全国に一定レベル以上の講師の先生を育成し、手作りコスメの認知度を上げていきたい
―――今後、辻本さんがやっていきたいこと、目標とは?
もっとたくさんの方に手作りコスメを知ってもらいたいですね。
教えることのできる講師の方が増え、私と同じように教室を開いたりワークショップをしていただける方が増えると、手作りコスメという認知も上がってくるかなと思います。
最近は、協会に、法人からイベントのワークショップをしてほしいという依頼も増えています。うちの協会で学んでもらった講師の先生たちはここまでのレベルは身に着けていますよと保証をしていくことで、講座を開催する際、講師の先生たちに講師料をお支払いすることができるので、資格をとって終わりではなく、協会で学んでもらうと次の仕事に繋がっていくという、会員と協会とのwinwinな関係と良い流れをを作っていきたいと思っています。
全国に協会会員と講師の先生が一定数増えてきていただければ、協会主催で全国でワークショップも開催していきたいですね。
【クラウドファンディング】子どものできた!の心と個性を育む手作りキッズコスメキット
―――クラウドファンディングが開始したとお聞きしました!
2021年4月1日から、クラウドファンディングを開始しました。
編み物やアクセアリーなどの、手作りのおもちゃに夢中なるお子さんがいると思います。手作りする楽しい!という気持ちが、手作りコスメキットを通して体験することができます。
プロジェクトの支援はこちらから↓
―――プロジェクトをやろうと思った理由はなんですか?
きっかけは、このコロナ禍で家にいる時間が長く、娘と一緒に手作りコスメを作成する機会があったことです。その時、キラキラした笑顔で完成したコスメを使っている娘を見て、手元にある材料で子どもたちに楽しいお家時間を作れないかと思いました。
母子家庭の支援を行っている愛知県母子寡婦福祉連合様とのご縁も頂き、材料を小分けにした手作りコスメキット80人分を子ども達へ贈ることができました。この時子ども達から、「楽しかった!」「簡単にできて面白かった!」「違う物も作ってみたい」とたくさん嬉しい感想を頂戴しました。
お母さん達からは、「材料がわかるから安心で、もっと色々作らせたいです」「私も楽しくて夢中になりました!」「メイク用品のキットがあったら欲しいです!」などのリクエストも頂きました。この経験から、お母さんも安心して買ってあげられる材料で、手作りできるキッズコスメキットを商品化して届けたいと強く思いました。
自分の手で手作りする体験は、子どもの「できた!」という気持ちを育み自信に繋がっていく大切な時間です。
お母さんの化粧品に興味を持ち、メイクに憧れを抱く女の子は多いと思います。そんな女の子の憧れや楽しい気持ちを大切にできる、メイキングトイとキッズコスメを組み合わせた、手作りキッズコスメキットを商品化しました。
手作りしてメイクを楽しめるだけではなく、化粧品原料について触れながら、化粧品がどういう物で作られているのかを学べる内容にもなっています。親御さんが安心して買ってあげられる、自然由来の材料で化粧品を手作りできる商品です。手作りした化粧品でお子さんがメイクを楽しんでも、洗顔石鹸で落とすことができます。
リターンは、【手作りキッズコスメキット】だけでなく、【ファンデーションの材料セリサイトの日本唯一の産出地 愛知県東栄町のセリサイト鉱山見学ツアーor手作りコスメ体験チケット付き】もあります。愛知県東栄町の町おこしにも繋がるこのプロジェクト、東栄町の魅力とセリサイトの存在も多くの方に知って頂けたら嬉しいです。
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