『株式会社For Next』代表取締役 /『 学習塾エンカレッジ』塾長 橋本真弓さん
プロフィール
20年前から、独学でMicrosoft製品を中心に勉強、フリーで中小企業へのIT化や電子化を手伝い、ITの様々な分野について経験を積む。
「Excelの神様」田中亨氏からExcelVBAを学び、難攻不落だと言われた手書き使用の特殊な台帳の電子化に成功、生産性アップに貢献。
次世代の若いお母さん達にこのスキルを伝えたいという思いから、『株式会社For Next』を立ち上げる。
カルチャーセンターを事業継承し、『学習塾エンカレッジ』を拠点として子供向けプログラミング教室など様々な学びを提供している。
女性起業家を応援し、地域の起業家のコミュニティ作りにも尽力。2020年11月、一般社団法人勇者アカデミーを設立。
次世代のために、女性の支援をしたい。それが起業のきっかけでした
元々私は、オフィス製品、特にエクセルが得意だったので、それを仕事に繋げたいと思っていました。
三菱ふそうの事務所で働いていたことがあり、担当で手書き台帳の登録業務があったんですけど、その登録台帳だけがどうしても電子化が難しいって言われてたんですね。でもどうしても電子化したくて、それを成し遂げるためには、ExcelVBAていうマクロ機能を習う必要があると知ったんです。
当時の年齢は50歳を過ぎていましたが、自腹で「Excelの第一人者」田中亨先生に習いに行って。それで無事電子化できたんですよ。現在もそれは可動しているんですけど、今考えてみると、Excelを10数人で同時に読み書きさせるような使い方はしないので、エラーが起きずに動いているのは本当に凄い奇跡だと思います。
電子化に成功して、こんな全国規模の会社で使ってもらう物ができるんだったら、小さい会社さんの役にも立てるんじゃないかと思いました。その時52歳だったんですが、このまま定年しちゃったら、普通に家に入っておばあちゃんになっちゃうなと・・・。じゃあこのスキルをたくさんの人に渡したい!と思いました。
昔、お風呂屋さんで早朝の掃除アルバイトをしてる時があったんです。その時一緒に働いていたのが、みんな若いお母さんたちだったんですけど、めちゃくちゃ責任感のある子たちばかりで本当に一生懸命やってるわけですよ。
よく長く続くねって話したら、「子どもが旦那さんと寝てくれている早朝のこの時間に仕事をして、子どもが起きる時間にはお母さんとして一緒にいてあげられる。だからこの時間に働いてる」と。でも、パソコンとかできないけど本当は事務仕事がしたいって話しているのを聞いたんです。
安い時給で肉体労働しているお母さんたちも、スキルさえあれば事務職で高い時給をもらうことができて、子どもが学校に行ってる間だけ働くことができる。次世代のために、そんな女性の支援をしたいと思ったのが、「株式会社For Next」を立ち上げたきっかけです。
マイクロソフトの本社で体験した「楽しく学びあう」という仕組みが、今の学習塾の形に繋がっています
よく、東京のマイクロソフト本社でのIT勉強会に行っていました。
参加しているエンジニアさん達は、土日なのに自分たちの意志で集まってくるんですよ。勉強会参加費用も交通費も会社がもってくれるわけでもなく、すべて自分たちで支払っていて。そこで最新の技術を学んで帰るんだけれども、みんなすごい意欲と熱量だったんです。
オフィスの中には、たくさんのセミナールームがあるんです。
休憩スペースがあるんですけど、冷蔵庫にはペットボトルがいっぱい並んでいて、自動販売機もお金を入れなくてもボタン押せば出てくるようになっていて、どれもすべて飲み放題。コワーキングスペースみたいなお洒落なところもあって、その空間と雰囲気が凄く好きだったんですよ。
そんな環境の中で、あーでもないこーでもないって言いながら、新しい機能がこうだとかどうのこうのと話して。とにかくそのスタイルが格好よくて、勉強するのがめちゃくちゃ楽しかったんですね。
大人がこんなに楽しいんだから、子どもたちもこういうスタイルがいいんじゃないのって思ったのが、今塾長をしている「学習塾エンカレッジ」の形を作り上げるきっかけです。ITの人がやっているような自主的に学びたくなる塾にしたかったんです。
もともとは通常の塾と同じ、成績を上げるためや高校進学のためのものにしていました。でも、そういう塾はもう辞めようと。「学びあう」とか「勉強が好きでいる」塾にしようって決めて変えちゃったんです。もしそういう塾に需要がないと言われたら潔く辞めようと思って。そんなこんなでちょうど3年やってきています。
イートインコーナーを設けて、子どもたちが好きな時間に休憩が取れるようにしました。勉強中に眠いなって思ったら、無理して続けるのではなく部屋から出てきて飲み物を飲んでもOK。
先生たちにも、「眠たい時にやっていても効率なんて上がらないから、休憩は自由に取らせてあげること」を周知しました。教室は、飲み物の持ち込みも自由にして、飲みながら勉強してもいいとしています。
居心地の良い中で、いつまでも勉強できるのがいいかなと。
月曜から金曜まで何日来てもらってもいいという形にしています。
本来はコロナがなかったら、授業をやってる教室とは別に、喋らずに黙々勉強したい子のための『もくもくルーム』、みんなでわいわい疑問を話し合いながら一緒に調べて学びを深めるような『わいわいルーム』にしようと思っていました。今はコロナ禍で、やろうとしてたことが出来ていないんですけど、コロナが落ち着いたらこんな形にしていきたいですね。
うちの塾はチラシは出していないんですが、去年は子ども達の口コミからの入塾が多かったですね。本当に、子どもたちが子どもたちを呼んでくるみたいな感じで、ひと学年だけでも15人くらい増えて倍の人数なりました。凄くありがたい話ですよね。
学ぶことは一生だと思っているので、学ぶための場に行くのが苦になるのはよろしくないなと思います。勉強するのが楽しいっていうのが一番ですよね。
読み書き障害・ディスレクシアの子との出会いから、学習障害の子たちへの支援をはじめました
塾にきている子の中に、真面目で一生懸命やっているのになかなか成績が上がってこない、しまいには「どうせ俺はダメだから」と言い始めてしまった子がいたんです。色々話を聞きながら、口頭ではちゃんと分かっている、けど書くのが苦手みたいだなと分かったんです。その出来事がきっかけで、【読み書きの障害・ディスレクシア】について本を集め調べるようになったんです。
その子のお母さんの協力もあり、ディスレクシア協会名古屋の吉田優英先生のところに辿り着いて、その子が検査を受けることになったんです。結果はやっぱり「ディスレクシアの症状が確かにある」と出て、検査をした先生がきちんとレポートを書いてくれました。先生に書いてもらった合理的配慮のレポートを、お母さんが学校に持っていくことになったのですが、ここから学習障害の子どもへの支援が始まりました。その後の支援では、私自身も親御さんに付き添って学校に行ったりもしています。
日本の学校制度の中では、書けないということがものすごく致命傷なんです。理解はしているけど、字が書けない。うちの塾に来ている子で、半数近いお子さんが、障害とはいかないまでも何かしら読み書きに苦手意識を持っている事が多かったんですね。
障害にもグラデーションがあるので、その子その子で違う。それを正確にはかる先生がいないと、怠けてるとか何でやれないんだみたいな言われ方をしてしまうんだけど、その子たちは一生懸命頑張ってるんですね。
読み書きの障害の子って、まだ全然数値化もできていないし、矯正するものもないんですよ。
その発達性ディスレクシアについて、日本でディスレクシア第一人者の宇野彰先生が書かれた『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』っていう書籍があるんです。この本を読ませていただき、本当に勉強になりました。こういう子どもがいるとしたら、学習塾でどういうサポートができるのかなとすごく考えましたね。
ディスレクシアの子たちには、その子たちに合う教え方が必要なんです。
私たちは学習塾という立場なんですけど、学校に対して合理的配慮を説明し理解してもらったり、進学のサポートをやりたいなと。そのためにはICT(情報通信技術)が使えた方がいいので、塾でタイピングを教えたり、そこに集約していきたいですね。
プログラミング教室を希望したこ子たちの中で、パソコンを自作したいという子たちに合わせ、今年急遽「自作パソコンコース」を作ったんです。それに対してのお問い合わせが凄く多くて(笑) 参加した子の半分近くが不登校なんです。後でディスレクシアと分かった子も数名いました。
私よりもパソコンがかなり詳しい子もいて、IQも凄く高いのに誰も担保しないんです。その子がいいところを今から伸ばして、何かに繋げていけたらいいなと思っています。
私の子は今はもう30 歳なんですけど、ディスレクシアだったと思うんです。当時はそれが分からなくて、中学に入る時に発達障害と知的障害って言われたんですよ。先生にも、この子は中学校の授業は分からないと思いますって言われたから、それ以上やらせるのは可哀そうだと思って、知的障害の子として育ててきちゃったんですね。
でも最近になって色々なお子さんの検査をみせてもらった時に、うちの子の症状がディスレクシアとぴったりで・・・うちの子と変わらないじゃんて思って。凄い後悔ですよね、悔しい。
その時に一番思ったのが、他の大人が関わってほしいってことだったんです。お母さんとしては関われるけど、お母さんがどれだけ関わってもお母さんでしかない。子どもに第三者の大人が関わってくれる、それを凄く望んでいたから、今自分がそういう役割を果たしたいと思っていますね。
次世代のために。一般社団法人『勇者アカデミー』にかける思い
社名の「For Next」は、プログラミング言語の中で「繰り返し命令」という意味なんです。ForとNextの間に書かれた処理を繰り返す度に、変数の「i」が増えていくという使い方なんです。
お仕事を繰り返すたびに「i」(愛)と信頼が増えていくという想いと、もう一つが次世代のためにというのを掛けています。次世代のために、次の世代を育てていきたい、それが今の私の目標ですね。
学習障害に関しては、ディスレクシア第一人者の宇野彰先生と繋がり、今活動をしていて、「学習障害をもった子が学習できる基盤づくりをする」これは私の使命だなと思っています。
そして今年2020年11月17日、小牧市の起業家5人とともに、一般社団法人勇者アカデミーを設立しました。
勇者アカデミーは、子ども・女性・起業家など未来を担う勇者に対し共に育つ場の提供をし、「夢を叶える人」を増やし、地域社会に貢献することを目的として活動しています。設立メンバーは、デザイナー・保育園園長・キャリアコンサルタント・学習塾経営者・元名古屋大学助教授です。子ども・女性・起業家の支援事業に関わる方々に、人生を変える「出会い」や「学び」が得られることを願っています。
私が今まで行ってきた学習障害の子や親御さんへの支援も、「次世代を育て繋げる」ということで勇者アカデミーに繋がっています。企業とのの連携もしていきたいですし、これからますます頑張っていこうと思いますね。
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勇者アカデミーについては、次の記事に続きます。
楽しみにお待ちください♪
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