名古屋で13年振りに『落語家』が誕生! 名古屋落語界期待の新星登龍亭獅鉄さんインタビュー(2)

噺一つで笑いも涙も自由自在に誘う日本の伝統芸能・落語。ナゴヤビトでは、名古屋で13年振りに誕生した名古屋落語界期待の若手落語家・登龍亭獅鉄さんにインタビュー行いました。

パート1では獅鉄さんと落語との出会いや、大学・社会人時代の活動についてお話をお伺いしました。

[パート1はこちら]

パート2では双方経験された獅鉄さんから見た「落語」と「演劇」の違いについて、そしていよいよ獅篭師匠に入門するお話へと移っていきます。

―― 登龍亭獅鉄さんは演劇と落語の両方を経験されていますが、演劇と落語の違いというとどのような点が上げられるでしょうか?

表向きの違いと裏側の違いがそれぞれありますが、表向きは「伝統」という言葉がつくかどうかの違いはあります。落語というだけで「伝統芸能」とか「歴史がある」とか「日本の芸能」と見られる部分があるので、例えばおじいちゃんおばあちゃんの前でやって欲しいという依頼が入ったり、メディアからも伝統芸能の視点から取り上げてもらえたりなど、そういった面では大きいと思います。

一方で裏側の違いとしては、ぶっちゃけ落語の方が「かかる費用が安い」ですね。学生劇団もやっていましたが、演劇だと1回の公演で何十万とかかるんですよ。それを考えると落語は全然お金をかけていないのにこんなにもお客さんを楽しませることができるんだなと驚きました。

―― 確かに落語だと身一つに座布団1枚、あとは高座になるような場所があれば出来ますもんね。

もちろん演劇には演劇の良さがありますし、予算の多寡がどうのこうのという話ではないのですが、お金をかけずに楽しませることができるというのは落語ならではかなと思います。

それともう一つ。落語界隈は基本的に個人主義なので色々な面で“おおらか”な方が多いように感じます。演劇の世界はチームワークが基本なので、どれだけのベテランの方でも舞台監督さんや若いスタッフさんが注意したらそれを守るんですよ。一方で落語界隈は個人主義ということもあるせいか「俺がやれといったからやれ」と言ってくるお師匠さんも中にはいらっしゃいました。ここはかなり大きなカルチャーショックでした。

―― 東京・大阪と違って名古屋はたった3人しか落語家が居ませんでした。その中で、東京や大阪へは行かずに、名古屋の獅篭師匠に弟子入りしようと申し込まれたのは何故でしょうか?

忘れられない一席がありまして。2011年12月28日、大須で毎月28日に行われている「28寄席」を落研仲間で見に行ったんです。東日本大震災が発生した年の最後の28日寄席で、そのトリで上がったのが獅篭でした。その時の落語が「こんなに落語って面白いんだ」と衝撃を受けたんですよね。当時は自分自信も就活中でボロボロに疲れていたんですが、そんな疲れも吹き飛ばすような面白さだったのを今でも覚えています。そのことがずーっと頭に残っていて、門を叩くきっかけになりました。

―― なるほどです。ちなみにどんな噺だったかお聞かせ頂けませんか?

「勘定板」という古典落語でして、調べて頂ければ分かるんですがこれが食事の場には差し障るようなド下ネタなんですよ。かける場所を選ばないと大変なことになるような。「震災があった年の〆の落語だぞ」とざわついたんですが、それが自分にとっては大変衝撃的で大笑いしました。こんなに落語で時間も忘れることができたんだな。それが頭に残っていて「入門するなら獅篭師匠にしよう!」となりました。

(著者注:その当時の落語は今でもニコニコ動画で見ることができます)

―― 獅篭師匠にはどのような形で入門を申し込まれたのでしょうか?

まずは自己紹介からですね。そして事前に福三兄さんと面識があったのでそのことをお伝えして、そこから「弟子を取られるご予定はありますか?」と聞きました。そうしたら「行く行くは取ろうと思っている」と返ってきまして、それならばと「私は弟子に入りたいと思っているのですが、よろしいでしょうか?」とお伺いします。

そうしたら師匠は「わかった。またおいで」と。

―― 獅篭師匠らしいですね。

本当に弟子を取ろうかどうか悩んでいたんだと思います。

また、自分がプロの業界に入って分かったんですが自分で弟子入り志願しておいて来なくなるという人間もいるんですよね。二、三回だけ顔を出して来なくなるとか。だから最初はこうやって試すものなんだと、この世界に入ってから分かりました。

それを何回か繰り返しながらかばん持ちとしてついて回るようになり、1年ほどたった頃の『ママには俺から言っておく(注:獅篭師匠が定期開催している落語+トークイベント)』の前に、「落語後のトークでお前を楽屋から呼ぶから、ステージに上がってこい」と言われたんです。で、呼ばれてステージに上がったところで「弟子になりたいそうだから、今から名前をつける」と『字音亭ザク』の名前を頂きました。

―― その場でだったんですね。

いやー、びっくりしましたね。自分、ガンダム何にもしらねえぞって(笑) 慌ててTSUTAYAに行って、初期とゼータとダブルゼータを借りて見ましたよ。意外と面白いなーって(笑)

―― 獅篭師匠にとっても初めてのお弟子さんなので、相当悩まれていたかもしれませんね。

いろいろ迷いながら判断されていたんだと思います。その辺りは入門してからひしひしと感じました。

縁によって結ばれた登龍亭獅篭師匠と獅鉄さん。入門を認められてからは名古屋唯一の『前座』として前座仕事を一手に担って行くことになります。そ獅鉄さんの前座時代のお話はパート3にて。

[パート3に続く]

登龍亭獅鉄さんの落語会情報など最新情報はTwitterにてご覧下さい!

Swind/神凪唐州

作家 兼 名古屋めし専門料理研究家。
名古屋と名古屋めしをテーマに小説、漫画原作、料理本、コラムなどを執筆。

名古屋めしレシピ動画&生配信→http://youtube.com/c/swind758/

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